2026.08.03
その経理代行、税務相談までしていませんか?―経理BPOと税理士業務の境界
人手不足を背景に、記帳代行や給与計算、請求業務などを外部へ委託する「経理アウトソーシング」「経理BPO」を利用する中小企業が増えています。
経理担当者を一人採用するよりも、必要な業務だけを外部へ任せられる。
これは中小企業にとって有効な選択肢の一つです。
一方で、経理代行を利用する際に気をつけたいことがあります。
それが、
「経理実務」と「税務判断」の境界です。
特に、
「会計事務所で働いていた人だから税務も分かるだろう」
「元会計事務所職員だから申告まで任せても大丈夫だろう」
と考えてしまう場合には注意が必要です。
会計事務所での勤務経験と、税理士として税理士業務を行えることは別の問題だからです。
目次
「元会計事務所勤務だから安心」とは限らない
経理代行サービスの中には、
「会計事務所勤務経験あり」
「税理士事務所で○年間勤務」
といった経歴を掲げているケースがあります。
もちろん、会計事務所での勤務経験は、経理実務を行ううえで間違いなく有益な経験の一つです。
しかし、
「会計事務所で働いた経験があること」と「税理士業務を行う資格があること」は同じではありません。
税理士法では、他人の求めに応じて租税に関し「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」を業として行うことを税理士業務としています。
そして「業とする」とは、反復継続して行うこと、または反復継続して行う意思をもって行うこととされ、必ずしも報酬を受け取ることを要しません。
つまり、
「無料で答えているから大丈夫」
という単純な話でもありません。
会計事務所の社員が副業で記帳代行をすること自体が、直ちに問題になるわけではない※要注意
ここは誤解のないようにしておきたいところです。
私のような会計事務所の元社員、現役社員が、副業・独立などで企業の記帳代行や経理業務を受託すること自体が、直ちに税理士法違反になるわけではありません。
国税庁も、税理士業務に付随しない会計帳簿の記帳代行等について、それ自体が税理士法によって禁止されているものではないことを示しています。
例えば、
・領収書や請求書を整理する
・会計ソフトへ取引を入力する
・売掛金、買掛金を管理する
・請求書を発行する
・入金状況を確認する
・社内の経理資料を整理する
こうした経理実務を外部へ委託することは、一般的な経理アウトソーシングの領域です。
問題になるのは、その先です。
記帳代行と税務相談は同じではない
例えば、会社から経理代行会社へ次のような質問があったとします。
「この領収書を会計ソフトに入力してください」
これは基本的には経理・記帳の領域です。
一方、
「この支出は税務上、損金にできますか?」
「この取引には消費税がかかりますか?」
「この方法とこちらの方法では、どちらが税金を少なくできますか?」
「この処理で申告して問題ありませんか?」
といった具体的な税務判断が必要になる質問は性質が異なります。
国税庁は「税務相談」について、租税の課税標準等の計算に関する具体的な質問に対し、答弁、指示または意見を表明することとしています。
また、税務官公署へ提出する申告書等を自己の判断に基づいて作成することは「税務書類の作成」に該当するとされています。一方で、自己の判断を伴わない単なる代書は含まれないとされています。
だからこそ、実務では、
「入力すること」と「税務上どう処理するかを判断すること」を切り分ける
という考え方が重要になります。
無資格者が複数企業の税務相談や申告書作成まで行っている場合には注意
さらに注意したいのが、
「会計事務所で長く働いていたから」
という理由で、税理士資格を持たない人へ複数企業が継続的に税務相談や申告書作成まで依頼しているようなケースです。
税理士法第52条では、法律に別段の定めがある場合を除き、税理士または税理士法人でない者が税理士業務を行うことを制限しています。
国税庁も、税理士業務について、税務代理・税務書類の作成・税務相談を反復継続して行う、またはその意思をもって行う場合には「業とする」に該当し、必ずしも有償である必要はないと説明しています。
さらに税理士法基本通達では、税理士でない者が相当多数の法人・個人の「使用人」という形を取りながら税理士業務を反復継続している場合についても、実態として使用人ではなく、法を免れるため名目上そのような形を取っていると認められる場合には、税理士法第52条に抵触するものとして取り扱うとされています。
したがって、
会計事務所で働いた経験があるから、複数企業の税務相談や申告書作成を当然に受託できるわけではありません。
依頼する企業側も、誰に何を依頼しているのかを確認することが大切です。
「安いから」「会計事務所経験者だから」だけで選ばない
経理アウトソーシングを選ぶ際、
「月額料金が安かった」
「会計事務所経験者だった」
という理由だけで依頼先を決めるのはおすすめできません。
重要なのは、
その会社が「どこまで自社で対応し、どこから専門家へつなぐのか」を明確にしているか
です。
何でも答えてくれる人を見ると、頼りになるように感じるかもしれません。
しかし、専門サービスにおいては、
「これは私たちの領域です」
「ここから先は税理士へ確認します」
と明確に切り分けられることも、品質の一つだと私たちは考えています。
良い経理BPO会社は「何でも自社でやる会社」ではない
経理BPO会社に求められる役割は、税理士の代わりになることではありません。
例えば、
日々の記帳を整える。
請求・入金・支払いを管理する。
給与計算などのバックオフィス業務を整える。
クラウド会計を適切に運用する。
月次の数字を早く把握できる状態をつくる。
こうした日々の経理体制を構築することが、経理BPOの重要な役割です。
そのうえで税務判断が必要になったら税理士へ。
社会保険・労働関係で専門的な判断が必要になったら社会保険労務士へ。
契約や法律問題なら弁護士へ。
何でも自社で抱え込むのではなく、それぞれの専門家へ適切につなぐ。
それも企業のバックオフィスを支える会社に必要な能力です。
AI・クラウド会計時代に「入力できること」だけでは価値になりにくい
今後、この考え方はさらに重要になると考えています。
freeeをはじめとするクラウド会計、AI、自動仕訳、OCR、銀行口座やクレジットカードとの自動連携などによって、経理業務は急速に変わっています。
これまで人が行っていた単純な入力作業は、今後さらに自動化されていくでしょう。
その中で経理BPO会社に求められるのは、
「仕訳を入力できます」
だけではありません。
業務フローをどう設計するか。
誰が入力し、誰が確認するのか。
請求から入金までをどう管理するのか。
月次の数字をどれだけ早く経営へ届けるのか。
資金繰りをどう見える化するのか。
そして、税務判断が必要になったときに、適切な専門家へどうつなぐのか。
これからの経理アウトソーシングでは、
単純な作業代行よりも、「業務設計」「品質管理」「経営管理」の価値が高くなる
と私たちは考えています。
eLectio Raiseは「経理実務」と「税務判断」を切り分けています
株式会社eLectio Raiseでは、経理BPOと税理士業務の役割を明確に切り分けています。
私たちが行うのは、
・記帳、経理実務
・請求、入金管理
・給与計算等のバックオフィス業務
・クラウド会計の運用
・業務フローの構築・改善
・資金繰り管理
・金融機関対応支援
・経営管理
・社外CFO支援
などです。
一方で、
税務判断、税務相談、税務代理、税務書類の作成など、税理士業務に該当するものは提携税理士へつなぎます。
税理士業務は、原則として税理士または税理士法人等に認められた専門業務です。日本税理士会連合会でも、登録されている税理士・税理士法人を確認できる税理士情報検索サイトを公開しています。
私たちは、
「何でもできます」という会社を目指しているわけではありません。
専門領域を正しく切り分け、それぞれの専門家と連携しながら、企業の経営管理体制をつくる。
それが株式会社eLectio Raiseの考える「社外経営管理部」です。
まとめ
経理代行や記帳代行を利用すること自体に問題があるわけではありません。
むしろ、人材不足が進む中小企業にとって、経理アウトソーシングは有効な選択肢の一つです。
ただし、
「会計事務所経験者だから税務も任せられる」
とは限りません。
経理実務と税務判断は、似ているようで役割が異なります。
大切なのは、
誰が経理を行うのか。
誰が税務判断を行うのか。
誰が経営数字を管理するのか。
この役割を明確にすることです。
株式会社eLectio Raiseでは、経理BPOによって日々のバックオフィスを整え、資金繰り・金融機関対応・経営管理・社外CFO支援によって、その数字を経営判断につなげます。
そして税務判断が必要になった場合には、提携税理士と連携します。
専門領域を正しく切り分けることも、経理品質の一つです。
今の経理体制は大丈夫ですか?
「記帳をお願いしている人に、そのまま税務相談までしている」
「経理代行会社と税理士の役割がよく分からない」
「社長自身が経理・資金繰り・税理士とのやり取りをすべて抱えている」
「経理を外注したいが、どこまで任せればよいのか分からない」
そんな状態になっていないでしょうか。
株式会社eLectio Raiseでは、現在の経理体制を整理したうえで、
「社内に残す業務」
「経理BPOへ任せる業務」
「税理士等の専門家へ任せる業務」
「経営管理として整える業務」
を切り分けるところから支援しています。
経理体制や資金繰り、バックオフィスに不安がある場合は、まずは現在の状況を整理するところからご相談ください。
株式会社eLectio Raise は群馬県・埼玉県を中心に中小企業のバックオフィスを支援する独自サービス社外経営管理部サービスを提供しています。